ボストンの街並みの中で、ひときわ異彩を放つレンガ造りの美しい邸宅。館内に足を踏み入れると、イタリアの古城を思わせる中庭、優雅な回廊、壁いっぱいに飾られた絵画や彫刻。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館は、ひとつの美術館を超えた、選び抜かれた芸術の空間。19世紀末の大富豪でありアートコレクターのイザベラ・スチュワート・ガードナーの個人邸宅として1903年に開館し、彼女の美意識と愛情が今も色濃く残る唯一無二のミュージアムです。
- イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の歴史と成り立ち
- ヴェネツィア・ルネサンス様式の異空間
- イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の見どころ ジャンルと時代を超えた珠玉の美
- 総コレクション数約7,500点、常設展示は約2,500点
- 美術館ならではの鑑賞体験
- ヨハネス・フェルメール「合奏」(紛失)
- ジョン・シンガー・サージェント「イザベラ・スチュワート・ガードナーの肖像」
- ティツィアーノ「ルクレティア」
- レンブラント「自画像」
- ピエロ・デッラ・フランチェスカ「イタリアの聖母子」
- エドガー・ドガ「踊り子の習作」
- ボッティチェリ「聖母とと子ども」
- フランス・オランダのタペストリー・家具コレクション
- 日本・中国・イスラム美術コレクション
- アンリ・マティス「静物」
- アンダーソン「沈黙の聖母」
- ピーテル・パウル・ルーベンス「エウロパの略奪」
- ジャン・オノレ・フラゴナール「読書する娘」
- フランチェスコ・グアルディ「ヴェネツィアの風景」
- アルフレッド・シスレー「セーヌ川の洪水」
- ベルナルド・ベッロット「ドレスデンの眺望」
- ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハ「建築模型・バロック時代」
- 中国・明代「青花磁器」
- ペルシャ・サファヴィー朝「絨毯」
- イスラム金工「カリグラフィー付き燭台」
- イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館 生きている美術館の魅力
- 未解決の美術館盗難事件 アメリカ史上最大のミステリー
- アクセス・基本情報
- まとめ
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の歴史と成り立ち
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イザベラ・スチュワート・ガードナーとは誰?
1840年、ニューヨークの名家に生まれ、ボストンの実業家ジョン・L・ガードナーと結婚。ヨーロッパ美術や音楽、文学への情熱を募らせ、19世紀末から世界各地で名品を収集。彼女の人脈は当時の画家ジョン・シンガー・サージェント、作曲家チャールズ・マーティン・レフラーらアメリカ文化界の精鋭にまで及びました。
夢の館の建設
自身の膨大なコレクションを誰でも楽しめる美の宮殿として公開したいと考えたイザベラは、ボストン・フェンウェイ地区に土地を購入。ヴェネツィアの宮殿、ドゥカーレ宮殿に着想を得た美術館を建設し、1903年に盛大な開館パーティーを開催しました。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館と遺言
イザベラは「展示の順番や装飾の仕方まで自身が決めた通りに、未来永劫そのままにしてほしい」という厳格な遺言を残しました。そのため、展示空間・調度品・家具・照明・絵画の配置に至るまで、開館当時の雰囲気が今もそのまま保たれています。
そのため、警備やマナーに関しては他のミュージアムに比べて厳格です。写真撮影などは一切禁止されています。
ヴェネツィア・ルネサンス様式の異空間
イタリアの建築美をボストンの中心地に再現
館の中心にはガラス屋根で覆われた中庭(コートヤード)があり、四季折々の花々や彫刻、噴水が異国情緒を演出します。回廊から見下ろす中庭の美しさはガードナー美術館のシンボル。
各ギャラリー(部屋)は、イタリア、フランス、イギリス、スペインなどの歴史的様式に沿って設えられており、まるで大邸宅を旅するような気分で芸術を体験できます。
建築家ウィラード・シアーズの手腕
館の設計を手がけたのはウィラード・T・シアーズ。レンガと石、木彫、ステンドグラス、アンティーク家具などを使い、イザベラの「家そのものが芸術作品」という理想を見事に形にしました。2012年にはレンゾ・ピアノ設計による現代的な新館(エントランス・カフェ・イベントスペース)が完成し、歴史と現代が共存するさらに大きな美術館へと進化しています。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の見どころ ジャンルと時代を超えた珠玉の美
総コレクション数約7,500点、常設展示は約2,500点
絵画・彫刻・装飾美術・写本・写真・工芸品など、そのジャンルは多岐にわたります。特にイタリア・ルネサンス美術、オランダ黄金時代絵画、印象派、アジア・イスラム美術など世界各国の名品が揃い、世界有数の個人コレクションとしても知られます。
美術館ならではの鑑賞体験
作品と調度、空間そのものが一体化した物語的展示。時代や地域ごとに分かれた一般的な美術館と異なり、「イザベラの美意識で自由に組み合わされた」独自の展示空間が最大の特徴。大学や国営の教育施設としての美術館とはまた違ったインスタレーションです。
お気に入りの作品を部屋ごとに巡り歩き、心のおもむくままに鑑賞できる贅沢を味わえます。
ヨハネス・フェルメール「合奏」(紛失)
17世紀オランダ黄金時代を代表する名画。室内で音楽を奏でる男女3人を描き、静謐で優雅な光の表現が見事。残念ながら1990年の盗難事件で未だ行方不明となっている幻の名画でもあります。
ジョン・シンガー・サージェント「イザベラ・スチュワート・ガードナーの肖像」
この美術館の創設者イザベラ本人を描いた肖像画。サージェントの鋭い観察眼と、イザベラの個性・気品・情熱がそのままキャンバスに封じ込められた、アイコン的作品です。
ティツィアーノ「ルクレティア」
イタリア・ルネサンスを代表するティツィアーノの名作。古代ローマ伝説の高潔な女性ルクレティアの悲劇を描き、劇的な構図と鮮やかな色彩、心理描写が際立つ傑作です。
こんな作品がイタリアを離れてボストンにあるという奇跡をぜひ実物を見て感じて欲しいです。
レンブラント「自画像」
オランダ黄金時代の巨匠レンブラントが晩年に描いた自画像。老いた自分自身の姿を、誇りと哀愁を込めて表現。光と影、表情の深みが、画家の人間味を伝えています。
ピエロ・デッラ・フランチェスカ「イタリアの聖母子」
厳かな構図と澄んだ色彩、立体的な人物表現が特徴のルネサンス宗教画。聖母子と天使たちの静かな調和、信仰と美の理想が融合した優雅な一作です。
エドガー・ドガ「踊り子の習作」
印象派の巨匠ドガがバレエダンサーの動きを捉えた習作。しなやかな身体、軽やかな筆致が舞台裏の緊張感と美しさを伝えます。
ボッティチェリ「聖母とと子ども」
イタリア・ルネサンスの詩情あふれる聖母子像。柔らかな曲線、優美な色彩、母と子の親密なまなざしが観る者を和ませます。ボッティチェリの作品がアメリカにもあることがまず驚きですが、個人蔵というのもさらに驚きです。
フランス・オランダのタペストリー・家具コレクション
16~18世紀ヨーロッパの貴族邸宅を彩った壮麗なタペストリーや豪奢な家具が、館内の各部屋を飾ります。絵画と一体化した空間展示は、ガードナー美術館ならではの体験。全てが美しくコーディネートされていて、最高で最強のインテリアデザインになっています。
日本・中国・イスラム美術コレクション
陶磁器、書画、屏風、ペルシャ絨毯、イスラム金工など、東洋・中東の美が随所に散りばめられています。イザベラ自身の異文化への興味と好奇心が反映された、多彩な名品群です。
アンリ・マティス「静物」
鮮やかな色彩とリズミカルな構図で描かれたマティスの静物画。ガードナー美術館の“現代”を象徴する一枚として、伝統と革新の共存を体現しています。
