こんにちは、なんだろなアメリカのキョウコ@NandaroAmericaです。
アメリカに暮らしてもう15年ほど経ちましたが、こちらで生活していて、初期の頃からずっと思っていたことがあります。
もしかして、アメリカの人って家庭科を習っていない人が多いのでは?
もちろん、アメリカにも家庭科に近い授業はあります。Home Economics、または現在ではFamily and Consumer Sciences、FCS、FACSなどと呼ばれる科目があり、料理、栄養、裁縫、家計、子育て、消費者教育、生活設計などを扱う分野です。
ただ、日本のように全国の小中高校で、ある程度みんなが家庭科を経験する、という感じではないことが多いようです。州や学校区によって、必修だったり、選択科目だったり、そもそも開講されていなかったり、Career and Technical Education、職業教育の一部に入っていたりします。
アメリカのFamily and Consumer Sciencesは、かつてHome Economicsと呼ばれていた分野で、現在も中等教育で選択または必修科目として扱われることがありますが、地域や学校によって位置づけはかなり違います。家庭科系の職能団体であるAAFCSの前身、American Home Economics Associationは1909年にEllen H. Richardsによって設立され、当初から栄養、消費者教育、公衆衛生、家庭生活の科学的改善などに関わる分野でした。
一方、日本では、家庭科は「生活する力」を学校で教える科目としてかなり根付いています。小学校・中学校・高校のどこかで一度は学ぶ人が多いのではないでしょうか。
この記事では、アメリカにはなぜ家庭科がないことがあるのか、日本にはなぜ家庭科があるのか、家庭科を習っていないことで生活にどんな影響が出るのか、そして私たちは家庭科をどう考えたらいいのかについて書いてみます。
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主張:家庭科は地味だけれど、人間が自立して暮らすためにかなり重要な教育である
私は、家庭科はとても大事な科目だと思います。家庭科は単に料理や裁縫を習う授業ではなく、人間が毎日を安全に、健康に、経済的に、そして自立して暮らすための基礎を学ぶ科目だからです。
食べること、着ること、住むこと、お金を使うこと、家族と暮らすこと、子どもを育てること、高齢者や病気の人を支えること、消費者として判断すること。これらは、大学に行く人にも、行かない人にも、男性にも、女性にも、子どもにも、大人にも、すべての人に関係します。
アメリカでは、家庭科的な教育が学校によってあったりなかったりします。そのため、生活に必要な知識を家庭で教えてもらえる子は学べますが、そうでない子は学ぶ機会がないまま大人になることがあります。
一方、日本では、家庭科が学校教育の中にかなりしっかり組み込まれています。これは、日本で育った私たちにとっては当たり前すぎて気づきにくいのですが、アメリカで暮らしてみると、かなりありがたい教育だったのではないかと感じます。
家庭科は、人生の土台を作る教育です。学校で教える価値が十分にあると思います。
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アメリカでは家庭科が全国一律の必修ではないため、生活力に家庭差が出やすい
アメリカに家庭科がまったくないわけではありません。ただ、日本のように「学校でみんなが家庭科を習う」という感覚とは違います。
アメリカでは、教育制度が州や学校区ごとにかなり違います。カリキュラム、卒業要件、選択科目、学校予算、教師の配置、施設、地域の考え方によって、家庭科系の授業があるかどうかが変わります。
ある学校では、FACS、Family and Consumer Sciencesとして、料理、栄養、家計、子育て、衣服、キャリアなどを教えているかもしれません。
別の学校では、料理や栄養はHealthの授業の一部、家計はEconomicsやFinancial Literacy、裁縫はArtや選択科目、子育てはChild Developmentという別科目になっているかもしれません。また別の学校では、そもそもそういう授業がほとんどないかもしれません。
アメリカの高校卒業要件は州によって異なります。卒業に必要な科目や単位は州ごとに違い、家庭科系の内容が全国一律で必修になっているわけではありません。
日本から見ると、これはかなり不思議です。え、料理や栄養や裁縫や家計のこと、学校で一通り習わないの?と感じることがあります。
アメリカにも、昔はHome Economicsという科目がありました。ただし、歴史的には「女性が家庭を守るための教育」というイメージも強くありました。料理、裁縫、家事、育児、家庭管理が、女性の役割として教えられていた時代が長くあります。
その後、女性の社会進出、ジェンダー平等、進学重視、STEM教育の拡大、学校予算の削減、職業教育の再編などの流れの中で、Home Economicsという名前や内容は変わっていきました。
現在は、Family and Consumer Sciencesという名前で、男女問わず、生活、家族、消費者、キャリア、栄養、福祉などを扱う分野として残っています。しかし、学校によっては必修ではなく選択科目です。予算が限られれば、キッチン設備や専門教員が必要な授業は削られやすいのかもしれません。
テストの点数、大学進学、STEM、スポーツ、AP科目に力を入れる学校では、家庭科の優先順位が下がることもあるのだと思います。また、アメリカでは「家庭のことは家庭で教える」という考え方もあります。学校が生活全般を教えるより、家庭、地域、教会、クラブ、仕事、個人の選択に任せる傾向があります。
この「家庭に任せる」文化は、うまく機能すればよいのですが、家庭によって知識や習慣の差がかなり出ます。親が料理をする家庭の子は、料理を見て学べます。親が栄養に詳しい家庭の子は、食べ物の選び方を学べます。親が家計管理をして見せてくれる家庭の子は、お金の使い方を学べます。
しかし、親が料理をしない家庭、家計管理を教えない家庭、栄養の知識が乏しい家庭、生活習慣が整っていない家庭で育った子は、それを学校でも学ばないまま大人になる可能性があります。ここに大きな差が出るのではと私は感じます。
根拠2:日本の家庭科は、暮らしを学校で底上げする仕組みになっている
一方、日本の学校には家庭科があります。日本の家庭科は、単に料理や裁縫を教える科目ではありません。暮らしを科学的・実践的に学ぶ科目です。
日本では、学校教育の中で、子どもが将来自立して生活するために必要な基礎を教えるという考え方が強いです。小学校では調理や裁縫の基礎、中学校では衣食住、家族、消費生活など、高校ではより広い生活設計や社会との関わりを学びます。
日本の学校は、文部科学省の学習指導要領に基づいて教育内容が組み立てられています。つまり、日本では家庭科を学校教育の中に位置づけ、全国的にある程度共通した生活の基礎を学ぶ仕組みがあります。
日本の家庭科がある背景には、戦後の生活改善、栄養改善、公衆衛生、家庭生活の近代化、男女共同参画、消費者教育、少子高齢化、食育、環境問題など、いろいろな社会的課題があります。
日本は学校が生活習慣や社会性を教える範囲が広い国です。給食、掃除、係活動、家庭科、保健、道徳などを通じて、家庭だけではなく学校でも生活の基礎を学びます。
日本で家庭科を習った人は、意識していなくても、かなりいろいろな生活知識を学校で受け取っています。
ご飯を炊く。味噌汁を作る。野菜を切る。栄養素を知る。食品群を知る。包丁を使う。火加減を知る。布を縫う。ボタンをつける。洗濯表示を見る。アイロンを使う。家計や消費生活を考える。悪質商法を知る。食事のバランスを考える。
これらは、ものすごく高度な専門技術ではなく、むしろ暮らしの基礎です。この基礎があると、一人暮らし、結婚、子育て、節約、健康管理、介護、家計管理、引っ越し、災害時の備えなど、いろいろな場面で役に立ちます。
家庭科を習った当時は、「なんでエプロン作らされるの」「なんで調理実習するの」「めんどくさい」と思った人も多いかもしれません。でも、大人になってみると、あれはかなり大事だったのではと思います。
今私は世帯を持ってから、家庭の範囲内のレベルの料理や裁縫、掃除、衛生管理、育児などで大きく困ったことはありません。
根拠3:家庭科的な知識がないと、健康・家計・自立に影響が出やすい
家庭科を習っていないからといって、必ず生活力がないわけではありません。家庭でしっかり教わる人もいます。料理が得意なアメリカ人もたくさんいます。DIYや家の修理、庭仕事、ベーキング、バーベキュー、保存食、家計管理、投資や資産運用など、日本人よりずっと上手な人もいます。
ただ、学校で基礎を習っていない場合、家庭差が大きくなります。親が料理をしない家庭で育つと、料理の基本を知らないまま大人になることがあります。栄養の知識が弱いと、安い・早い・甘い・脂っこい食事に偏りやすくなります。家計や消費の知識がないと、クレジットカード、ローン、保険、契約、詐欺に弱くなります。裁縫や衣服の手入れを知らないと、直せるものをすぐ捨てることになります。
これは自立や暮らしの質を下げると思います。たとえば、冷蔵庫にあるもので一食作れるか。野菜とたんぱく質をどう組み合わせるか。子どものランチに何を入れるか。安い食材で栄養をどう確保するか。洗濯で縮む素材を見分けられるか。簡単な修繕ができるか。お金の使い方を考えられるか。
こういう力は、学力とは別の「生きる力」で、意外と人生を左右します。
アメリカで暮らしていて感じるのは、栄養の知識の差が生活の質にかなり影響するということです。
アメリカには、ファストフード、冷凍食品、スナック、甘い飲み物、巨大なデザート、加工食品がたくさんあります。もちろん健康志向の人も多いですが、食の選択肢が極端です。
家庭科的な基礎があると、「これは炭水化物ばかりだな」「たんぱく質が足りないな」「野菜がないな」「砂糖が多いな」「塩分が多そうだな」と考えられます。
でも、そういう基礎を学んでいないと、食事を「お腹がいっぱいになるもの」「味が濃くておいしいもの」「安くて早いもの」として選びやすくなります。その結果、肥満、糖尿病、高血圧、生活習慣病、子どもの食習慣にも影響していきます。
もちろん、これは家庭科だけで解決する問題ではありません。貧困、食品価格、地域のスーパー事情、労働時間、ストレス、文化、医療制度なども関わります。でも、基礎的な栄養教育があるかないかは、大きいと思います。
私の夫は今50代前半ですが、高校まで家庭科らしき授業はなく、高校にて木工をやったそうです。そしてお料理関係は、ケーキミックスでケーキを焼くというのが15、6歳であったらしいです。学校でやったお料理は人生の中でそれ一回のみ。私からするとケーキミックスでケーキは非常に簡単で、あまり料理のうちには入らないのではと感じてしまいます。それよりも目玉焼きやゆで卵やパンを焼くとかの方が優先して教えるべきではないかなと思います…。
日本では小学校5、6年ではご飯が炊けて、鮭が焼けて、ハンバーグや餃子やシチューやカレーが作れて、お味噌汁、ほうれん草のおひたしくらいが作れるようになりますよね。その家庭で食事担当をするかどうかは別としても、大学生や社会人になって一人暮らしする時に、まったく何もできないということにはなりにくいと思います。
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補足:家庭科は女性だけの科目ではなく、全員に必要な生活教育である
家庭科というと、古いイメージでは「女の子が料理や裁縫を習う科目」と思われることがあります。
しかしながら、家庭科を男女全員が学ぶことは、家事や育児を女性だけのものにしないためにも大事だと思います。
男性でも女性でも、自立する際に料理や掃除などを知っておいて損はありません。むしろ、全員が生活の基礎を学ぶことで、家庭内の負担を公平に分けやすくなります。
料理、掃除、洗濯、家計、栄養、育児、介護、消費者教育は、女性だけが自然にできるものではありません。
人間が生きるために必要な技術です。
だからこそ、家庭科は「家事を女性に押しつける科目」ではなく、「誰もが自立して暮らすための科目」として考えるべきだと思います。
提案:アメリカにも家庭科的な教育がもっとあっていい
私は、アメリカにも家庭科的な教育がもっとあっていいと思っています。
名前はHome Economicsでなくてもいいです。Family and Consumer Sciencesでも、Life Skillsでも、Practical Livingでも、Food and Nutritionでも、Financial Literacyでもいいと思います。
大事なのは、若い人が生活の基礎を学ぶことです。簡単な食事を作る。栄養を理解する。食品ラベルを読む。洗濯表示を読む。簡単な裁縫をする。家計を立てる。クレジットカードの仕組みを知る。ローンと利息を理解する。保険を理解する。契約や詐欺を知る。子どもの発達を少し知る。高齢者や障害のある人との暮らしを考える。食品ロスや環境を考える。
これを学校で教えることは、大学進学やSTEM教育と矛盾しません。むしろ、どんなに高学歴でも、食べる、寝る、支払う、住む、育てる、看病する、生活を回す力がなければ、人生は不安定になります。
日本にいる時は、家庭科のありがたみをあまり感じませんでした。でもアメリカに住むと、家庭科的な知識は本当に大事だと感じます。
暮らしの力は、収入が少ない時ほど大きな力になります。お金があれば、外食、デリバリー、クリーニング、修理、代行サービスで解決できることもあります。でも、お金がない時、自分でできる力があるかどうかで生活の安定度が変わります。
家庭科は、貧困対策にも、健康対策にも、自立にも関係していると思います。
読者への問い:家庭科はもっと重視されるべきでしょうか
アメリカには家庭科がないことがある。日本には家庭科がある。この違いは、単に学校制度の違いではなく、暮らしを誰が教えるのか、家庭にどこまで任せるのか、学校がどこまで生活力を育てるのか、という文化の違いでもあると思います。
アメリカは、家庭や個人の自由を尊重します。その分、家庭差が大きくなります。日本は、学校が生活習慣や基礎的な生活力までかなり教えます。その分、全体の底上げがある気がします。
どちらが完全に正しいという話ではありませんが、私は、家庭科はかなり大事だと思います。
料理ができる。栄養がわかる。お金の使い方を考えられる。服や物を直せる。生活を整えられる。これは、学歴や仕事以前に、人間が健康に暮らすための基礎です。
皆さんはどう思いますか?
家庭科はもっと重視されるべきでしょうか。アメリカの学校にも必修で入れた方がいいと思いますか。日本の家庭科で習ったことで、大人になって役に立っていることはありますか。逆に、もっと教えてほしかった生活スキルはありますか。
アメリカで育った方はどうでしょうか。家庭科はあまりやりませんでしたか?
私は、大人になってから、家庭科ってかなりありがたかったんだなとしみじみ思っています。
結論:家庭科は人生の土台を作る教育である
アメリカには、家庭科にあたるHome Economics、現在のFamily and Consumer Sciencesがあります。
しかし、日本のように全国的に多くの子どもが同じように家庭科を学ぶというより、州や学校区、学校予算、選択科目、卒業要件によって大きく差があります。
アメリカの家庭科系教育は、かつて女性の家庭役割と結びついたHome Economicsの歴史を持ち、その後Family and Consumer Sciencesとして再編されてきました。AAFCSの前身であるAmerican Home Economics Associationは1909年に設立され、栄養、消費者教育、公衆衛生、家庭生活の科学的改善などに関わってきた分野です。
一方、日本では、学習指導要領に基づき、家庭科が生活に必要な基礎を学ぶ科目として位置づけられています。
家庭科を習っていると、料理、栄養、裁縫、家計、住まい、消費者教育など、暮らしの基礎が身につきます。家庭科を習っていない場合、これらを家庭や個人の経験に頼ることになり、家庭差が大きくなります。
私は、家庭科は地味だけれど、とても大切な科目だと思います。
暮らしは毎日続きます。
食べる、着る、住む、払う、整える、直す、育てる、看病する。
この力は、人生の土台です。
アメリカで暮らしていると、家庭科的な教育がもっとあった方が、健康にも、自立にも、家計にも、子育てにも役立つのではないかと感じます。
皆さんはどう思いますか。
