こんにちは、なんだろなアメリカのキョウコ@NandaroAmericaです。
XなどSNSを見ていると、在米民を中心に時々盛り上がる話題があります。
アメリカの食べ物はまずい。
アメリカ飯はデブまっしぐら。
バーガー、ホットドッグ、ピザ、フライドチキン、バーベキュー。
クレイジーなオレオ揚げ、バター揚げ、巨大な肉、巨大なケーキ、巨大なドリンク。
見ているだけで胃が重い。
体に悪そう。
成人病まっしぐら。
いわゆる「アメリカメシマズ」の議論です。日本の人たちが冗談半分、本音半分で熱く語り合うのも、まあわかります。
日本の食文化は ご飯、味噌汁、魚、野菜、漬物、だし、海藻、豆腐、発酵食品、季節の食材、少量多品目、素材を生かす技術。貧困や地域の制約の中でも、先人たちが手元にあるものを最大限に使い、栄養を引き出し、体に染みるような「美味しい。。。」を作り上げてきました。
一方、アメリカの定番料理には、ダイナミックで、ボリュームにも圧倒され、油、肉、小麦、チーズ、砂糖、塩、ソースが強く、「うおおおお、うんま!!!!!」と脳に来るメニューが多いです。
では、アメリカ料理は本当にまずいのでしょうか。そして、移民の国であり、世界中の料理があるアメリカで、なぜ「アメリカの料理」と言うと、歴史ある国の料理に比べて、技や栄養の知恵が薄いように見えるのでしょうか。
この記事では、アメリカメシマズ問題を、誰も傷つけない方向で楽しく考えてみます。
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アメリカ料理はまずいのか
まず最初に言いたいのは、アメリカ料理は「全部まずい」わけではありません。
むしろ、おいしいものはたくさんあります。
バーベキュー。
クラムチャウダー。
ガンボ。
ジャンバラヤ。
コーンブレッド。
アップルパイ。
パンケーキ。
ビスケット。
グリッツ。
クラブケーキ。
ニューイングランドのシーフード。
南部料理。
テックスメックス。
カリフォルニア料理。
ニューヨークのベーグル。
シカゴやニューヨークのピザ。
ハワイのローカルフード。
アメリカにも地域料理はたくさんあります。
考えてみてください。日本からアメリカに来てから太ってしまった人が圧倒的に多いのに、仮にまずいものばかりだったら、太らないはずですよ。(私はアメリカに来てから15キロ増えました。)そして、私もこのブログで10年近くにわたって「ニュージャージーうまいもの伝説」を掲載し続けるわけです。
Library of Congressの地域料理リストでも、地域の料理は、先住民の作物や動物、世代を超えた移民や入植者の影響で形作られると説明されています。つまり、アメリカにも土地と歴史に結びついた食文化はあります。
ただ、日本人が「アメリカ飯」としてイメージしやすいものが、巨大バーガー、ピザ、フライドチキン、ホットドッグ、甘すぎるケーキ、揚げ物祭りに偏っているのも事実です。
問題は、アメリカ料理が存在しないことではありません。アメリカで目立つ食文化が、家庭の知恵や季節の滋養よりも、便利さ、速さ、大きさ、濃さ、外食、加工食品、イベント性の方に寄っていることです。
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日本食の「美味しい…」とアメリカ食の「おいしい!!!」
日本食とアメリカ食の違いを、かなり乱暴に言うとこうです。
日本食は、しみじみ系です。
だしが効いている。
素材の味がある。
季節感がある。
量よりバランス。
噛むほどにおいしい。
疲れた体に染みる。
「美味しい…」という感じです。
アメリカ食は、インパクト系です。
肉が大きい。
ソースが強い。
チーズがのる。
揚げる。
焼く。
甘い。
しょっぱい。
香ばしい。
見た目からして豪快でびっくりする。
一口目で勝負。
「おいしい!!!」という感じです。
各国、食文化の目的が違うのだと思います。
日本食は、限られた食材、季節、保存、発酵、米を中心とした食生活の中で、体を維持する知恵として洗練されました。
アメリカ食は、広い土地、移民、肉、小麦、乳製品、工業化、大量生産、外食、車社会、イベント文化の中で発展しました。
だから、アメリカ料理は「毎日体を整える料理」というより、「腹を満たす」「仲間と食べる」「外で食べる」「派手に楽しむ」「速く提供する」方向で発展したものが目立ちやすいのです。
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アメリカ料理の文化はどこに行ったのか
アメリカ料理の文化はどこに行ったのでしょうか。
私は、消えたというより、いくつかに分かれて存在しているのだと思います。
一つは、地域料理です。南部料理、ケイジャン、クレオール、ニューイングランド、テックスメックス、ハワイ、アパラチア、先住民料理、アフリカ系アメリカ人のソウルフードなどです。それぞれちゃんと歴史があります。
もう一つは、移民料理です。イタリア系、ユダヤ系、中国系、メキシコ系、韓国系、ベトナム系、インド系、中東系、日本系など、アメリカには世界中の料理があります。多くの場合、それは「アメリカ料理」ではなく、「イタリアン」「チャイニーズ」「インディアン」「タイ」「スシ」として認識されます。
つまり、アメリカの食文化の豊かさは、アメリカ料理という一つの看板の下ではなく、移民ごとの料理として存在しているのです。
そして三つ目が、産業化されたアメリカ食です。ファストフード、冷凍食品、缶詰、スナック、シリアル、ソーダ、加工肉、インスタント食品、電子レンジ食品。
これが一番目立ちます。
だから、日本人から見る「アメリカ飯」の印象は、どうしてもこの三つ目に引っ張られます。
戦後のアメリカは「便利な食」を発明しすぎた
アメリカの食文化を語る上で重要なのは、戦後の便利さです。
1950年代以降、アメリカでは冷蔵庫、冷凍庫、缶詰、加工食品、電子レンジ、スーパーマーケット、車社会、郊外住宅が広がりました。
Smithsonianの1950年代食文化の記事では、缶詰食品が「元祖便利食品」として使われ続け、缶スープ同士を合わせるようなレシピも見られたと紹介されています。
また、Smithsonianの展示解説では、1950年から2000年にかけて新しい加工技術とともに食品添加物の使用が広がり、味、保存性、食感、色、栄養強化のためにさまざまな成分が加えられるようになったと説明されています。
ここでアメリカは、「家庭で時間をかけて作る料理」よりも、「すぐ食べられる」「長持ちする」「大量に作れる」「安定して同じ味」「子どもが好き」「運転しながら食べられる」食品をどんどん発展させました。
これは忙しい家庭には便利ですが、便利さを追求しすぎると、料理の技術や季節の感覚や栄養の知恵は家庭から抜けやすくなります。
なぜ移民の国なのに、みんな家で世界の料理を作らないのか
ここ、不思議ですよね。
アメリカには世界中のレストランがあります。イタリア、フランス、ドイツ、インド、中国、韓国、日本、ベトナム、タイ、中東、メキシコ、ギリシャ、エチオピア。外に行けば、本格的な料理が食べられる地域も多いです。
では、なぜ一般家庭の食卓がそこまで多国籍にならないのでしょうか。
理由はいくつかあります。
まず、移民料理は「家庭の中」に残りやすいからです。
インド系家庭はインド料理を作る。
韓国系家庭は韓国料理を作る。
日本人家庭は日本食を作る。
メキシコ系家庭はメキシコ料理を作る。
でも、それはそれぞれの家庭文化であって、アメリカ全体の平均的家庭料理にはなりにくいのです。
次に、料理には技術と時間が必要です。
インド料理にはスパイスの知識。
日本食にはだし、米、味噌、魚、切り方、下処理。
中華には火力、調味、切り方。
韓国料理には発酵食品や常備菜。
ベトナム料理にはハーブ、スープ、米麺。
これらは、レシピを見れば一回作れるかもしれませんが、日常的に作るには文化的な経験が必要です。
アメリカの一般家庭では、忙しさ、共働き、長距離通勤、子どもの習い事、外食、冷凍食品、デリバリー、食材へのアクセスの問題もあります。
結果として、「世界中の料理はレストランで食べるもの」になりやすいのです。
アメリカ料理に技術がないように見える理由
アメリカ料理が、歴史ある国の料理に比べて技術や栄養の知恵が少ないように見える理由は、家庭料理の蓄積の見え方が違うからだと思います。
たとえば日本では、家庭料理と文化が強く結びついています。
味噌汁が作れる。
米が炊ける。
魚を焼く。
煮物を作る。
漬物や常備菜を使う。
季節の野菜を食べる。
弁当を作る。
これらは、特別な高級料理ではなく、家庭で受け継がれる生活技術で、さらに日本の場合、義務教育内で調理実習があり、炊飯、味噌汁、おひたし、焼き魚、煮物などはみんな作れるようになります。
アメリカにも家庭料理はあります。
でも、家庭差が非常に大きいです。
料理好きな家庭はものすごく料理します。バーベキュー、ベーキング、サンクスギビング料理などに情熱を持つ人もいます。
一方で、家庭で料理をあまり教わらない人もいます。冷凍食品、シリアル、サンドイッチ、パスタ、ピザ、テイクアウトで育つ人もいます。
日本の家庭科のように、全国的に料理や栄養や生活技術を学校で一通り学ぶ経験も、アメリカでは地域や学校によって差があります。
つまり、アメリカ料理に技術がないのではなく、家庭料理の技術が全国共通の文化として底上げされにくいのです。
アメリカの食は「家庭料理」より「産業」と相性が良かった
アメリカの食文化を理解する上で外せないのが、産業です。
広い国土。
長距離輸送。
大規模農業。
大量生産。
スーパーマーケット。
冷凍食品。
ファストフード。
広告。
テレビ。
車社会。
アメリカでは、食べ物が産業として発展する条件がそろっていました。
同じ味を全国で売る。
どこでも買える。
長持ちする。
子どもに売る。
忙しい親に売る。
車で買える。
安く大量に出す。
この方向に進むと、家庭の知恵よりも、企業の開発力が強くなります。
そして企業は、味を強くします。
甘くする。
しょっぱくする。
脂を足す。
食感をよくする。
香りを強くする。
また食べたくなるようにする。
だからアメリカの食べ物は、一口目で「うまい!!!」となりやすいのです。でも毎日それを食べると、体が疲れる。ここが、日本人の感じる「胃がきつい」「太りそう」「体に悪そう」につながるのだと思います。
でもアメリカ人全員がそう食べているわけではない
アメリカ人全員が毎日バーガー、ピザ、フライドチキン、ソーダで暮らしているわけではありません。健康志向の人も多いです。サラダをたくさん食べる人もいる。
ビーガン、ベジタリアン、グルテンフリー、オーガニック、地元野菜、ファーマーズマーケット、地中海食、和食、韓国料理、インド料理を取り入れる人もいます。
アメリカは極端なのです。
ものすごく健康に気をつける人もいる。
ものすごく気にしない人もいる。
ものすごく料理する人もいる。
ほとんど料理しない人もいる。
食文化の差がとても大きい。
CDCのデータでは、2021年8月から2023年8月の期間で、20歳以上の成人の32.0%が調査日のその日にファストフードを食べており、成人全体では1日のカロリーの11.7%をファストフードから摂っていました。
つまり、ファストフードは確かにアメリカの食生活に大きく入り込んでいます。でも、それだけがアメリカの食文化ではありません。
アメリカメシマズ論は、半分当たりで半分雑
では、「アメリカメシマズ」は本当なのか。
私は、半分当たりで、半分違うと思います。
当たっている部分は、アメリカの大量生産・外食・加工食品・ファストフード文化が、確かに体に重く、味が単調で、栄養バランスが崩れやすいことです。味は置いておいて、「体には美味ではない」ものが多いのは明らかです。
USDAの2025-2030年版Dietary Guidelines for Americansは、「Eat real food」というシンプルなメッセージを掲げ、健康的で栄養のある食品を優先し、高度に加工された食品、加糖、精製炭水化物を控える方向を示しています。つまり、アメリカ政府自身も、加工食品や糖分・精製炭水化物に寄りすぎた食生活への問題意識を持っています。
一方で、違うと感じる部分は、アメリカには地域料理も移民料理も家庭料理も高級料理もあるのに、それを全部無視して「アメリカ飯=まずい」と言ってしまうことです。
それはちょっとかわいそう。アメリカ料理は、繊細な和食とは違い、異なるベクトルへ発展した文化です。
広い土地。
移民。
労働。
戦争。
大量生産。
車社会。
郊外。
忙しい家庭。
外食産業。
スーパーマーケット。
これらが全部混ざって、今のアメリカの食文化ができました。若い国ですが、それなりの理由となる歴史はあるのです。
アメリカ料理は「伝統がない」のではなく「伝統が分散している」
アメリカ料理が弱く見える理由の一つは、中心が見えにくいことです。
フランス料理ならフランス料理。
イタリア料理ならイタリア料理。
日本料理なら日本料理。
なんとなく核になるイメージがあります。
でもアメリカは、国そのものが移民と地域の集合体です。
先住民の食。
ヨーロッパ系移民の食。
アフリカ系アメリカ人の食。
メキシコ系の食。
アジア系移民の食。
地域の食。
産業化された食。
ファストフード。
これらが全部アメリカの食です。
だから、「アメリカ料理の正体は何か」と聞かれると、答えが散らばります。答えがあるようで、ない。そして、その中で一番強く広告され、全国展開され、世界に輸出されたのが、バーガー、コーラ、フライドチキン、ピザ、ドーナツ、スナックです。これは商業的・マーケティング的成功のせいでみんながこのイメージを持っていると言えるでしょう。コカコーラが赤い服のサンタさんを発明したように。
結果として、アメリカ料理の代表が「栄養の知恵」ではなく「カロリーの祭り」に見えてしまうのです。
まとめ
アメリカメシマズは本当なのか。
答えは、「アメリカの食文化の一部は、確かに日本人の胃にはきつい。でもアメリカ料理全体がまずいわけではない」です。
アメリカには、地域料理も、移民料理も、家庭料理も、素晴らしいレストランもあります。
ただし、世界に強く見えているアメリカの食文化は、便利さ、速さ、大量生産、肉、油、砂糖、チーズ、加工食品、ファストフードに寄っています。
それが、日本人には「技がない」「栄養の知恵がない」「体に悪そう」に見えやすいのです。
日本食は、限られた素材を生かし、季節と発酵とだしと米で、体に染みる「美味しい。。。」を作ってきました。
アメリカ食は、広い土地と移民と産業と外食文化の中で、脳に直撃する「おいしい!!!」を作ってきました。
どちらも、その社会の歴史から生まれたものです。
ただ、毎日の食事として体を整える知恵という意味では、日本食の強さは本当にすごいです。
一方で、アメリカの食文化を笑う時は、その背景にある移民の歴史、地域の多様性、便利さを求めた生活、そして巨大な食品産業の影響も一緒に見ると、単なる「メシマズ」では終わらない面白さがあります。
アメリカ料理は、まずいというより、雑で、強くて、楽しくて、時に危険で、時に最高。そして日本人の胃袋には、毎日はちょっと重い。
それくらいの距離感で眺めると、アメリカ飯はなかなか味わい深い文化なのだと思います。
参考資料・関連リンク
Smithsonian National Museum of American History
Postwar Potluck: Grilling out, convenience cooking, and other 1950s food trends
https://americanhistory.si.edu/explore/stories/postwar-potluck-grilling-out-convenience-cooking-and-other-1950s-food-trends
Smithsonian National Museum of American History
Food Plus
https://americanhistory.si.edu/explore/exhibitions/food/online/new-and-improved/snack-nation/food-plus
National Park Service
Post World War II Food
https://www.nps.gov/articles/post-wwii-food.htm
Library of Congress
Regional Food from Regional Libraries
https://www.loc.gov/nls/new-materials/book-lists/regional-food-from-regional-libraries/
USDA
Dietary Guidelines for Americans
https://www.fns.usda.gov/cnpp/dietary-guidelines-americans
CDC
Fast Food Intake Among Adults in the United States
https://www.cdc.gov/nchs/products/databriefs/db533.htm
