アメリカの代表的な祝日として知られる「サンクスギビングデー(Thanksgiving Day)」は、毎年11月の第4木曜日に家族や友人が集まり、感謝の気持ちを分かち合う大切な日です。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカに住むとこの祝日は非常に大事な年中行事であることに気付くでしょう。
サンクスギビングはアメリカ人の家族観やコミュニティの絆を強く感じられる一日。伝統的な料理や独自のイベント、そしてブラックフライデーへの流れなど、生活に深く根付いた文化的な背景があります。本記事では、サンクスギビングの起源や歴史、現代の祝い方まで詳しく解説します。
サンクスギビングデーの日にち・由来
サンクスギビングデーは毎年11月の第4木曜日に祝われます。
この日付は1941年にアメリカ議会によって正式に制定され、以降変わることなく続いています。
アメリカのサンクスギビングの起源
サンクスギビングの起源は1621年、イングランドからメイフラワー号でアメリカ東海岸のプリマス(現在のマサチューセッツ州)に到着したピルグリム・ファーザーズたちが、厳しい冬を乗り越えた翌年の秋に収穫を祝ったことに始まります。
ピルグリムたちは新天地での生活に苦しみ、初めの年には多くの死者を出しましたが、先住民ワンパノアグ族の助けによって農作物の育て方や狩猟方法を学び、2年目には豊作を迎えました。彼らはこの恵みに感謝し、ワンパノアグ族とともに収穫を祝う宴を開きました。この「最初の感謝祭」がサンクスギビングデーの由来とされています。
サンクスギビングはもともと、神への感謝や豊作への祈りを込めて、各地の植民地で個別に祝われていましたが、南北戦争中の1863年、当時の大統領エイブラハム・リンカーンが11月の最終木曜日を「感謝の日」とすることを宣言し、国民的な祝日となりました。その後、1941年に「11月の第4木曜日」として法律で定められ、現在の形に定着しています。
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サンクスギビングの歴史
サンクスギビングが始まった17世紀初頭のアメリカは、まだ現在のような独立国家ではなく、ヨーロッパからの移民が新たな生活を切り開いていた時代でした。
ピルグリム・ファーザーズたちの過酷な最初の冬
イギリスのピルグリム・ファーザーズは宗教的な自由を求めてアメリカへと渡り、困難な環境の中で生活を始めました。最初の冬は飢えや寒さ、病気で半数以上が亡くなるという過酷な状況でしたが、先住民の助力によって農業や生活技術を身につけ、翌年にはコーンやカボチャ、七面鳥などを収穫できるまでに成長します。
恵みに感謝し、ワンパノア族と共に祝った最初の感謝祭
この「感謝祭」は単なる食事の場ではなく、命の恩人である先住民ワンパノアグ族との共生の象徴でもありました。当時の食卓には、現代の七面鳥だけでなく、鹿肉や魚介類、野菜、果物など現地で採れた食材が並び、3日間にわたる盛大な宴となったと言われています。
その後も各地の植民地で収穫祭として続きましたが、祝う日は統一されておらず、各州ごとに異なる日を選んでいました。18世紀から19世紀にかけては、アメリカ独立戦争や南北戦争など、国家としてのアイデンティティが問われる時代に突入します。サンクスギビングは、「困難の中でも希望を忘れず、助け合いの精神を持つ」というメッセージを持つ祝日として徐々に浸透していきました。
南北戦争をきっかけに感謝の日を制定
1863年、作家サラ・ジョセファ・ヘイルの働きかけにより、リンカーン大統領は南北戦争で分断された国民を一つにするため「感謝の日」を制定。これが全国的な祝日となる大きなきっかけとなります。その後も第一次世界大戦や大恐慌など、苦難の時代を経て、「感謝する心」を大切にする祝日として定着しました。
また、サンクスギビングは移民国家であるアメリカならではの多文化共生の象徴でもあります。宗教的な色彩は薄れ、誰もが自由に祝うことのできる国民的イベントとして、現代の多様な家族構成や価値観にも柔軟に適応してきました。
アメリカのサンクスギビングの現代の祝い方
サンクスギビングデーは現代アメリカにおいて、最も家族重視の祝日のひとつとされています。この日は多くの人が遠く離れた家族のもとに帰省し、何世代にもわたる家族が一堂に会します。大都市では空港や高速道路が混雑し、年末まで続く「ホリデーシーズンの始まり」を象徴する一大イベントです。
家族が最優先になる日
サンクスギビングは、アメリカの祝日の中でも特にクリスマスと並んで「家族中心」の色合いが強い日です。連邦祝日として正式に定められている一方で、多くの人にとっては単なる休日ではなく、「どこで誰と過ごすか」が非常に大事な意味を持つ一日になっています。
クリスマスが宗教色や贈り物の文化と強く結びついているのに対し、サンクスギビングはもっと素朴に、「家族や親しい人と集まって食卓を囲む」ことそのものが中心になります。アメリカに住んでいると、この日が近づくにつれて学校や職場で予定の話題が増え、空港や道路が混み始め、「ああ、いよいよホリデーシーズンが始まるのだな」という空気がはっきり感じられるようになります。
店や学校、街の雰囲気もいつもとかなり違う
サンクスギビングの頃のアメリカは、街の雰囲気が普段とはかなり変わります。学校では子どもたちが七面鳥や収穫をテーマにした工作をしたり、「今年感謝していること」を書く宿題が出たりすることも多く、家庭にもホリデーを意識した連絡が回ってきます。
スーパーでは何日も前からターキー、パンプキンパイ、クランベリーソース、スタッフィング材料などが大きく並び、店全体が「感謝祭モード」になります。当日になると、普段は営業している店でも休業や短縮営業が増え、町全体がかなり静かになります。
特に大型スーパーやレストランでも営業時間が通常と違うことがあるため、旅行者や在米初心者は「前日までに必要なものをそろえておく」意識が大切です。感覚としては、日本のお正月前の買い出しや帰省ラッシュに少し似ていますが、より「食卓」と「家族集合」に重心がある印象です。
パレード、ターキー・パードン、そしてブラックフライデーへ続く流れ
現代のサンクスギビングでは、家庭の食卓と並んで、全国的な定番イベントもあります。代表的なのが Macy’s Thanksgiving Day Parade で、Macy’s 自身もこの伝統が 1924 年に始まったと案内しています。巨大バルーンやフロート、マーチングバンドの中継は、家庭で料理をしながら流していることも多く、「感謝祭の朝の風景」として定着しています。
また、ホワイトハウスのターキー・パードンも、現代の Thanksgiving を象徴するユーモラスな儀式の一つで、White House Historical Association は George H. W. Bush 政権以降、毎年の伝統として続いていると説明しています。
そして Thanksgiving が終わると、すぐにブラックフライデーへ流れ込むのも現代アメリカらしいところです。感謝と家族の祝日であると同時に、年末商戦のスタートでもあるため、静かな家族行事と巨大な消費イベントが連続しているのが、この祝日の独特な面白さだと思います。
伝統的な食卓と料理
サンクスギビングの食卓に欠かせないのが「ローストターキー(七面鳥の丸焼き)」です。七面鳥はアメリカ先住民が食べていた野鳥であり、ピルグリムたちも食していたと言われています。
他にも、詰め物(スタッフィング)、グレービーソース、クランベリーソース、マッシュポテト、スイートポテト、グリーンビーンズキャセロール、コーンブレッド、パンプキンパイ、ピーカンパイなど、地域や家庭によって多彩な料理が並びます。
料理の準備は数日前から始まり、家族総出でキッチンに立つこともしばしばです。近年ではヴィーガンやベジタリアンメニュー、グルテンフリーなど、家族の健康や多様な食文化にも対応したレシピも増えています。
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サンクスギビングの一日の流れと過ごし方
朝はテレビのパレード中継やフットボール観戦で始まります。最も有名なのはニューヨークの「メイシーズ・サンクスギビング・デーパレード」で、巨大なバルーンやマーチングバンド、パフォーマンスなどが全米に中継されます。NFLのフットボール試合も伝統の一つで、多くの家庭がテレビ観戦を楽しみます。
昼過ぎから夕方にかけて、家族や友人が集まって食事を囲み、それぞれが今年一年の感謝を述べ合う時間が設けられます。食事後にはデザートやコーヒーを楽しみながら、ゲームや会話をしたり、散歩に出かけたりするのが一般的です。
地域によっては、ホームレス支援やチャリティイベントに参加する家庭も多く、「与えること(Giving)」の精神を大切にする風習も根付いています。
ちなみに、大統領は朝ターキーパードンをし、午後はホワイトハウス周辺で炊き出しをして1日過ごすのが毎年の行事になっています。
七面鳥の恩赦(Turkey Pardon)とは?
サンクスギビング直前、ホワイトハウスで毎年行われる恒例行事で、大統領が感謝祭の晩餐で食べられる運命にあった一羽または複数の七面鳥(ターキー)に「恩赦(Pardon)」を与えるセレモニーです。大統領は七面鳥を前に「きみは食卓を免れ、自由になっていい」と宣言し、その七面鳥はその後、動物園や農場などで余生を平和に過ごすことになります。
起源は19世紀のリンカーン大統領時代までさかのぼると言われますが、公式な恒例行事となったのは1989年、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領からです。それ以前も大統領が七面鳥を贈られる伝統はありましたが、「恩赦」として明確に宣言し、ユーモアを交えて公のイベントとして行うようになったのは近年です。
サンクスギビングをどう受け止めるか 現代アメリカで進む見直し
名前はそのままでも、語り方は確実に変わってきている
サンクスギビングは今も Thanksgiving Day という名前のまま、連邦祝日として続いています。コロンブス・デーのように、祝日名そのものを大きく置き換える動きは、現時点ではそこまで広がっていません。けれども、だからといって何も変わっていないわけではありません。
近年のアメリカでは、サンクスギビングを「ピルグリムたちと先住民が仲良く収穫を祝った日」とだけ単純に語るのではなく、その背後にあった植民地化や先住民社会の痛み、土地の喪失といった歴史にも目を向けようとする姿勢が強まっています。この祝日をどう説明し、どう教え、どう記憶するかの部分で、見直しが進んでいます。
Wampanoag の歴史や視点を伝える Plimoth Patuxet Museums などでも、従来の一面的な「最初の感謝祭」像ではなく、より複雑で多面的な歴史として伝える試みが行われています。
先住民にとっては「感謝の日」ではなく、追悼の日でもある
この視点を象徴するものとしてよく知られているのが、National Day of Mourning(追悼の日) です。これは1970年からマサチューセッツ州プリマスで続いている動きで、感謝祭の日を、先住民にとっての喪失や植民地支配の歴史を忘れない日として位置づけています。
つまり、ある人にとっては家族が集まる温かな祝日であっても、別の人にとっては苦しい歴史を思い出す日でもあるということです。現代のアメリカでは、こうした複数の歴史が同時に存在していることを認める姿勢が、以前よりずっと重視されるようになってきました。
現代のサンクスギビングは「感謝」を続けながら、歴史を単純化しない方向へ
そのため、今のアメリカで起きている変化は、「サンクスギビングをやめる」ことではなく、感謝の習慣を続けながらも、その歴史を単純化しないことだと言えるでしょう。
家族でターキーを囲み、今年の恵みや無事に感謝する一方で、この祝日がどんな歴史の上に成り立っているのかも考える。学校や博物館、地域社会でも、先住民の文化や視点を含めて伝えようとする動きが少しずつ広がっています。
日本人としてこの祝日に触れるときも、「アメリカの楽しい家族行事」とだけ受け止めるのではなく、感謝とともに、誰の歴史が長く見えにくくされてきたのかにも思いを向ける日として理解すると、この祝日の持つ意味がより深く見えてくるはずです。
まとめ
サンクスギビングデーは、アメリカの歴史と多様な文化を象徴する祝日です。ピルグリムたちの感謝と生き抜く力、先住民との共生、そして家族やコミュニティとの絆が、現代まで脈々と受け継がれてきました。
アメリカに住むと、日本の「お正月」や「お盆」に近い、特別な意味を感じる方も多いでしょう。現代のアメリカでは伝統を大切にしつつも、新しい祝い方や多文化の要素を柔軟に取り入れ、ますます豊かな祝日となっています。
ぜひ、今年のサンクスギビングにはアメリカ流の過ごし方や料理、家族や友人との時間を心から楽しみ、感謝の気持ちを分かち合ってみてください。

