こんにちは、なんだろなアメリカのキョウコ@NandaroAmericaです。
アメリカに暮らしていると、自分が「日本からアメリカへ移住した人間」であることを、ふと歴史の流れの中で考えることがあります。
日本人は、いつからアメリカに来るようになったのか。
最初にアメリカへ入った日本人は誰だったのか。
日系移民の歴史は、どこから始まるのか。
ハワイ移民とアメリカ本土移民は、同じように語ってよいのか。
「日系アメリカ人」の歴史は、どこから始まったと考えるべきなのか。
この問いは、簡単なようで、実は少し慎重に考える必要があります。なぜなら、「最初の日本人がアメリカに入ったのはいつか」という問いには、いくつかの答え方があるからです。
個人として、記録に残る最初期の日本人渡米を指すのか。
アメリカ本土に住んだ最初期の日本人を指すのか。
集団移民としての始まりを指すのか。
ハワイへの日本人移民を含めるのか。
現在のアメリカ合衆国領土という意味でハワイを含めるのか。
当時すでにアメリカ合衆国だった場所に限るのか。
このように、視点によって答えが変わります。
この記事では、アメリカにおける日系人の歴史シリーズ第1回として、「日本人がアメリカに入った最初期の歴史」を、できるだけ中立的に整理します。
この記事の目的は、感情的な美談や単純化された物語ではなく、史料に基づいて、日本人移民・日系アメリカ人の歴史を正確に理解することです。
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まず「最初」をどう定義するか
「日本人がアメリカに最初に入ったのはいつか」と聞かれると、ひとつの日付を答えたくなります。
しかし、歴史を正確に見るなら、まず「最初」の意味を分ける必要があります。
第一に、個人としてアメリカ本土に渡った日本人の記録。
第二に、集団移民として海外へ渡った日本人の記録。
第三に、アメリカ本土に日本人が定住を試みた記録。
第四に、後にアメリカ合衆国の一部となるハワイへ渡った日本人移民の記録。
これらは似ていますが、同じではありません。
たとえば、1840年代にアメリカ本土へ来た日本人がいたとしても、それは計画的な移民ではなく、漂流や救助をきっかけとした渡米でした。
1868年に日本人がハワイへ渡ったとしても、当時のハワイはまだアメリカ合衆国ではなく、ハワイ王国でした。
1869年にカリフォルニアへ渡った若松コロニーは、現在のアメリカ合衆国本土における初期の日本人集団定住として非常に重要ですが、短期間で解体しました。
つまり、「最初の日本人渡米」は、ひとつの出来事だけで語るより、段階的に理解した方が正確です。
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個人として最初期にアメリカ本土へ渡った日本人|中濱万次郎
日本人がアメリカ本土に渡った最初期の人物としてよく知られているのが、中濱万次郎、いわゆるジョン万次郎です。
万次郎は、土佐の漁師の少年でした。1841年、漁に出た際に遭難し、仲間とともに太平洋上の無人島に漂着しました。その後、アメリカの捕鯨船に救助され、船長ウィリアム・ホイットフィールドのもとでアメリカへ渡ります。
万次郎は1843年にマサチューセッツ州フェアヘイブンへ到着し、英語や航海術などを学びました。
このため、万次郎は「アメリカに住んだ最初期の日本人」、あるいは「アメリカ本土に渡った最初期の日本人」としてしばしば紹介されます。
ただし、ここで注意したいのは、万次郎の渡米は、現代的な意味での移民ではなかったという点です。
彼は移住を目的に日本を出たわけではありません。漂流し、アメリカ船に救助され、結果としてアメリカで暮らすことになりました。
彼の経験は日米関係史の中で非常に重要です。日本がまだ鎖国政策の時代にあり、海外渡航が厳しく制限されていた時代に、万次郎はアメリカ社会を実際に見て、英語を学び、西洋の知識を身につけました。
1851年に日本へ帰国した後、彼は幕府に海外事情を伝える人物となり、幕末の日米関係にも関わっていきます。したがって、万次郎は「日系移民の始まり」というより、「日本人とアメリカ社会の初期接触」を象徴する人物として位置づけるのが適切です。
集団移民としての始まり|1868年の元年者
日本人の集団移民としてよく取り上げられるのが、1868年にハワイへ渡った元年者、Gannenmonoです。元年者とは、明治元年に海外へ渡った日本人移民を指す言葉です。
1868年、約150人の日本人がハワイへ渡り、砂糖きび農園などで働くことになりました。当時のハワイはまだアメリカ合衆国ではありませんでした。ハワイは当時、ハワイ王国でした。アメリカがハワイを併合するのは1898年、ハワイがアメリカの州になるのは1959年です。
そのため、1868年の元年者を「アメリカ合衆国への移民」とそのまま言うと、歴史的には少しずれます。しかし、現在のアメリカ合衆国における日系人史、特にハワイの日系人史を考える上では、元年者は非常に重要な出発点です。
彼らは、後にハワイ社会に根を下ろしていく日系移民の先駆けとなりました。また、元年者の移住は、明治維新直後の日本、ハワイの砂糖産業、国際労働移動、移民労働の歴史と深く関わっています。しかし、元年者の移住は、後の政府公認の移民制度とは異なり、当時の日本政府の許可問題や労働条件をめぐる問題も含んでいました。
そのため、元年者の歴史は、「夢を持って海外へ渡った美しい移民史」とだけ見るのではなく、労働、契約、移動の自由、国家の管理、移民保護の問題としても見る必要があります。
アメリカ本土の初期日本人集団定住|1869年の若松コロニー
アメリカ本土における初期の日本人集団定住として重要なのが、1869年にカリフォルニア州に作られた若松コロニーです。
若松コロニーは、現在のカリフォルニア州エルドラド郡、ゴールドヒル周辺に設立された日本人の農業入植地です。
会津若松出身の人々が中心となり、茶と絹の生産を目指してカリフォルニアへ渡りました。この背景には、戊辰戦争と明治維新の政治的混乱があります。旧会津藩に関係する人々が、新しい時代の中で海外に活路を求めた側面がありました。
若松コロニーは、アメリカ本土で日本人が集団として定住を試みた非常に早い例です。しかし、事業は長く続きませんでした。資金難や農業上の困難などにより、コロニーは短期間で解体しました。
それでも、若松コロニーは日系アメリカ人史において象徴的な意味を持っています。なぜなら、これは単なる漂流や一時滞在ではなく、日本人がアメリカ本土で共同体を作り、農業定住を試みた初期の記録だからです。
また、若松コロニーには、おけいさんとして知られる若い女性も含まれていました。彼女はアメリカ本土に埋葬された最初期の日本人女性として記憶されています。若松コロニーの歴史は、日系人史の始まりを考える時に、個人の漂流史から集団移民史へ移る重要な接点です。
1880年代以降の本格的な日本人移民
日本人の移民が本格的に増えるのは、1880年代以降です。
特にハワイでは、砂糖産業の労働力として多くの日本人が渡りました。1885年以降、日本政府の管理のもとで、より組織的な移民が始まりました。主に広島、山口、熊本、福岡などの地域から、多くの人々がハワイへ渡ったとされています。
アメリカ本土でも、19世紀末から20世紀初頭にかけて、日本人移民が増えていきます。
彼らは、農業、鉄道、製材、漁業、鉱山、家事労働、小規模商業など、さまざまな仕事に従事しました。
この時期の日本人移民は、Issei、一世と呼ばれる世代です。彼らは日本で生まれ、アメリカへ渡った第一世代です。アメリカで生まれた子どもたちは、Nisei、二世と呼ばれます。一世の歴史を考える時には、希望や勤勉さだけでなく、差別や排斥の歴史も無視できません。
アジア系移民に対する排斥感情、土地所有制限、帰化権の制限、労働差別、学校や地域社会での差別など、多くの困難がありました。
日系人の歴史は、成功物語であると同時に、アメリカ社会の人種、移民、労働、法律、戦争、 citizenship の歴史でもあります。
ハワイとアメリカ本土を分けて考える必要がある
日系人の歴史を学ぶ時、ハワイとアメリカ本土は分けて考える必要があります。
ハワイでは、日本人移民は非常に大きな人口集団となりました。砂糖農園で働いた移民とその子孫は、ハワイ社会の中で大きな役割を果たしていきます。
一方、アメリカ本土では、日本人移民は西海岸を中心に農業や商業で存在感を持つようになりましたが、同時に強い排日感情や法的差別にも直面しました。
第二次世界大戦中の日系人強制収容を考える時にも、ハワイと本土では扱いが異なりました。
本土西海岸では、大規模な強制退去と収容が行われました。一方、ハワイでは日系人の人口比率が高く、全員を収容することは現実的ではなかったため、本土とは異なる対応になりました。
このように、同じ日系人史でも、ハワイと本土では社会的背景、人口構成、労働環境、政治状況が違います。
第一回目のこの記事では、まず「最初期の日本人渡米」を整理しましたが、今後のシリーズでは、ハワイ移民、本土移民、一世、二世、排日運動、戦時強制収容、戦後の日系人社会などを分けていきます。
「日本人がアメリカに入った最初」はどう答えるべきか
ここまでを整理すると、「日本人がアメリカに入ったのはいつが最初か」という問いには、次のように答えるのが正確です。
個人としてアメリカ本土に住んだ最初期のよく知られた日本人としては、1843年にマサチューセッツへ渡った中濱万次郎が重要です。
集団移民としては、1868年にハワイへ渡った元年者が重要です。ただし、当時のハワイはまだアメリカ合衆国ではなく、ハワイ王国でした。
アメリカ合衆国本土における初期の日本人集団定住としては、1869年のカリフォルニアの若松コロニーが重要です。
本格的な日本人移民の増加は、1880年代以降、特にハワイの砂糖産業やアメリカ本土の労働市場と関わりながら進みました。
したがって、ひとことで「日本人がアメリカに最初に来たのは何年」と答えるなら、文脈を添える必要があります。
1843年 中濱万次郎
個人としてアメリカ本土に住んだ最初期の日本人として重要
1868年 元年者
ハワイへの日本人集団移民の始まりとして重要
1869年 若松コロニー
アメリカ合衆国本土での日本人集団定住の初期例として重要
1880年代以降
日本人移民が本格的に増加していく時期
このように分けて理解することで、日系人の歴史をより正確に見ることができます。
なぜこの歴史を学ぶ必要があるのか
アメリカに暮らす日本人にとって、日系人の歴史を知ることは、自分自身の立ち位置を理解する助けになります。
現代の日本人移住者、駐在員、留学生、国際結婚で移住した人、永住者、市民権を取った人は、19世紀の一世移民とは違う環境にいます。それでも、私たちは同じく「日本からアメリカへ移動した人々」の長い歴史の後にいます。
最初期の日本人渡米者は、漂流、労働、政治的混乱、経済的希望、国際関係の変化の中でアメリカへ渡りました。その後の日系移民は、労働者として、農民として、商人として、親として、地域社会の一員として、アメリカで生活を築いていきました。同時に、彼らは差別、排斥、法的制限、戦時強制収容という厳しい歴史にも直面しました。
日系人の歴史を学ぶことは、単に「昔の日本人は頑張った」という話ではありません。アメリカという国が、移民をどう受け入れ、どう排除し、どう利用し、どう市民として認めたり認めなかったりしてきたのかを考えることでもあります。そして、今アメリカに暮らす私たち自身が、移民社会の中でどのような存在なのかを考える手がかりにもなります。
まとめ
日本人がアメリカに最初に入ったのはいつか。
この問いには、ひとつの単純な答えではなく、複数の歴史的な節目があります。
個人としてアメリカ本土に住んだ最初期の日本人としては、1843年にマサチューセッツへ渡った中濱万次郎が重要です。
集団移民としては、1868年にハワイへ渡った元年者が重要です。ただし、当時のハワイはまだアメリカ合衆国ではなく、ハワイ王国でした。
アメリカ合衆国本土での日本人集団定住の初期例としては、1869年のカリフォルニアの若松コロニーが重要です。
そして、日本人移民が本格的に増加するのは、1880年代以降です。
この歴史を正確に見るには、ハワイとアメリカ本土を分け、個人渡米と集団移民を分け、移民の希望と同時に労働・差別・法律・国際関係の背景も見る必要があります。
日系人の歴史は、アメリカ移民史の一部です。
それは、日本人だけの歴史ではなく、アメリカという国が、アジアから来た人々をどのように受け入れ、制限し、排除し、そしてその子孫たちがどのように社会を築いてきたのかを知るための重要な歴史です。
このシリーズでは、今後も日系人の歴史を、できるだけ史料に忠実に、中立的に、わかりやすく整理していきます。
参考資料・公式リンク
本文作成にあたり、以下のような政府機関、公共機関、研究機関、博物館、教育機関の資料を参照すると理解が深まります。
Library of Congress
Japanese | Immigration and Relocation in U.S. History
National Park Service
Japanese Immigration to the United States
U.S. Department of the Interior
Wakamatsu Tea and Silk Farm Colonyに関する議会公聴会資料
Japanese American National Museum
Textured Lives / Gannenmono関連展示資料
National Diet Library
100 Years of Japanese Emigration to Brasil 内のハワイ移民・元年者に関する資料
Densho Encyclopedia
Immigration / Issei / Japanese American history

